六代目笑福亭枝鶴襲名披露公演へ行ってきました

セカンドミッション

 私の笑芸好きはこどもの頃からですが、主としてテレビによるところが大きいですね。土曜日の午後に、ABC朝日放送(大阪)で「道頓堀アワー」を見ることが大好きでした。角座からの寄席中継、中座の松竹新喜劇、田舎に住んでいたので生で見ることは(当時は)かないませんでしたが、今となってはアーカイブでしか見ることの出来ない名人・上手の元気な姿を見ることが出来ました。記憶に残っているのは昭和37(1962)年3月あたりの放送、恐らく四天王寺の亀の池あたりでアナウンサーの求めに応じて「天王寺詣り」「三十石」といったネタのさわりを紹介していた落語家、そう、四代目枝鶴あらため六代目松鶴の襲名を記念しての番組でした。その後六代目の実子が五代目枝鶴を襲名したのは昭和48(1973)年のこと、米朝門下の枝雀、春団治門下の福団冶と三人揃っての襲名披露は、上方落語四天王による戦後の落語復興の努力が実ったことを世間に広くアピールする出来事でした。私自身、五代目枝鶴の噺は襲名前だったか後だったかはっきりしないのですが、角座で「道具屋」を聴いたことがあります。独特の間を持つ人でとにかく面白く、「すごい人がいたんやなぁ」と感心したのでした。残念ながら結果的には廃業してしまいましたが、その唯一の弟子がこのたび六代目を襲名した昨夜の席、感慨深い一夜でありました。

 昨晩の番組は、次の通り。

動物園(笑福亭喬若)
三喬さんのお弟子さんですから、松鶴からすればひ孫弟子になるわけで、時代の推移を感じます。私ははじめて聴きましたが、お上手ですね、11分。
試し酒(笑福亭学光
鶴光さんのお弟子さんですが、意外なことに弟子が一人しかおられないのですね。しかも、鶴光さんが上方落語協会員であることも驚きでした、てっきり縁が切れたと思っていたので。さて学光さん、東京では当然小さんですが、小太りの体系にこの噺はよく似合います、誠に結構なできで15分。
義眼(桂南光)
米朝一門を代表しての登場、声も顔も汚いですが(失礼!)さすがは人気者、安心して笑えるのはありがたい。この噺は久しぶりに聴きました、21分。
祝いのし(桂春団治)
私が若い頃、三代目の噺はどうしても好きになれませんでした。マクラで笑わすわけでもなく、いつも決まったネタばかり・・・。しかし、米朝が実質的に噺ができない現状では、彼の姿そのものが上方落語の存在の証。じっさい、以前は笑う気にもなれなかった祝いのし、昨晩は自然と笑えたのです。これが芸というものの、一つの具体的な姿なのでしょう、25分。
中入り
口上
笑福亭鶴瓶の司会により、笑福亭仁鶴・桂福団冶・笑福亭福笑・笑福亭松喬・笑福亭松枝・桂南光・笑福亭鶴志・桂春団治の順で口上披露、最後に春団治の音頭により会場全員で大阪締め。一番笑わせてくれたのは松枝さん、襲名という言葉の意味をヤマトタケルと熊襲の関係から説明し、「こんな知識を披露できるのは、何も米朝一門だけではありません」と。春団治師の「枝鶴という名は、私にとっては青春そのもの」という件では、涙が出てしまいました。最後に鶴瓶が「春団治師匠を含めての口上はもう無いかも」と笑わせたのは、あながち嘘ではありません、22分。
道具屋(笑福亭仁鶴)
松鶴一門の惣領という立場から今夜は後見人的役割、すでに73歳になっているのですね。恐らく40代以下の方には、ギャグを連発して劇場全体を笑いのルツボと化し、歌手としても何曲もヒットを飛ばしていたなどと言うかつての人気者の姿は想像できないでしょうね。枝雀とは異なった、先代春団治スタイルのかつての爆笑王、ご健康を祈るのみです、20分。
宿替え(笑福亭枝鶴)
始まる前でロビーで偶然お会いしたのは、かつて三重県で取り組んでいた東紀州活性化大学のメンバーで、熊野市在住の獣医Eさん。落語好きは承知していましたが、出張のついでかと思いきや、なんと摂津高校で枝鶴さんの後輩だったとか。なるほど、昨晩の会場にはそのような関係者の方も多かったのでしょうね。ロビーでは後援会の入会案内、高座では新調された特大座布団の披露もあって、みんなで育てようという雰囲気一杯。ま、それほど大きな名前を次がれたということなのでしょう。噺については演出についていささかコメントしたいところはありますが、まずは今後の精進に期待してエールを送っておきましょう、26分。

 会場の文楽劇場に入る前に、ワッハ上方で桂米朝の殿堂入りを記念する展示を見てきました。個人的には著作も映像(の大半)も承知していますが、写真で見る加齢の変化を自分に置き換えてみると・・・、笑える気分ではなくなりました :mrgreen:

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.