第304回市民寄席

 自治体主催の寄席として初めての試みである市民寄席が京都で産声を上げたのは1957年9月のこと、300回を迎えたのが2010年5月8日(土)、そして昨日が数えて304回目、今年度最後の市民寄席に行ってきました。近年は年5回、そのうち1回は京都会館を使用し、それ以外は京都芸術センターがその会場となります。この会場は京都市内中心部にあって、元明倫小学校の建物を有効利用しようというもの。レトロな建物は大変素敵で、かつての小学校の講堂は大きさがちょうどいいのですが、毎回の不満は椅子の配置。真ん中から後には台を積んで少し高くしてあるのですが、いかんせん前から後まで椅子をぎっちりと詰めてあるため、かなりの席で演者が見えないのです。周りが空いていれば別ですが、ここ数年は毎回(ほとんど)満席、せっかくのライブなのに表情や仕草がきちんと確認できないのは辛い。映画館などでは近頃前の人の頭が邪魔にならないような工夫が当然のようになっていますが、ここは少し面倒でも、椅子半席分を前列からずらすように配置してくれれば有り難いのですが。

 昨日の番組は次の通り。

隣の桜(桂三弥
桂三枝さんのお弟子さん、初めて聴きました。3月の席ということで桜を扱った小品、やはり季節を感じさせるネタの選定はうれしいですね。にもかかわらず、今回の高座は「金返せ!」といいたくなるほどのひどい出来。旦那が丁稚に口写しで隣家への口上を教えるのですが、その台詞がカミカミで話にならない。普段なら前座の失敗など笑って済ませるのですが、いったい、本当にちゃんとネタを繰っているのかと、訝ってしまいました。緊張のせいかもしれませんが、10年を超えるキャリアを持つプロとしてはいただけません、19分。
四人ぐせ(桂米紫)
昨年8月の襲名を機に、出番が大変多くなりました。本人も周囲も、すっかり米紫という名前に馴染んだことでしょう。当日のプログラムで初めて知ったのですが、先代も当代も揃って京都出身とか。友だち四人が互いの癖を直そうと賭をする噺ですが、それぞれの仕草をわかりやすく表現するのがポイント。私にとっては彼の高座はすこしうるさく感じるほど賑やかなのですが、この噺は彼のスタイルにぴったり、21分。
大名将棋(桂小春団治)
春団治師の6番目のお弟子さん、いつの間にか30年を超えるキャリアを数えるようになりました。若い頃の彼は正直好きになれなかったのですが、加齢と共に落ち着きが出てきましたね。ただ、上方落語で殿様が登場してくる噺はやはり馴染みにくい。しかも、前半の将棋はともかくとして、後半の講談もしくは落とし噺を殿様が家来に聴かせるというのは・・・、やはり私には納得しかねるものがあります、30分。
市助酒(笑福亭松枝
昨年の史上最狂の笑福亭で久しぶりに聴いた松枝さん、今回のネタは市助酒、いやぁ嬉しかった〜!近年はどなたがやられるのか知りませんが、私にとってはなんと言っても六代目松鶴です。生で聴いたことはありませんが、ラジオ(多分、ABCヤングリクエスト)で聴いたのが高校生の時。以前にも書きましたが、やはり上方落語は笑福亭、上手下手に関係なく好きなのです。この噺は町内の雑用(=下役)をすることで暮らしている市助、彼が酒を飲みながらだんだんと酔っていく、その途中で町内の世話になっているという負い目と、地面近くで生きている人間固有の人生観がないまざって、独特の観察眼で町内の実相を暴きます。酒癖の悪い人間の長口上で噺が展開しますし、笑いの少ないネタですから、下手な演者では聴くに耐えません。実際、私の周囲でもこっくりこっくりする人がおられました。しかしそこは40年を超えるベテラン、途中でだれることもなく、堂々とサゲまで演じきりました。私にとっては松鶴の息を感じる至福の時間、いやぁ結構な40分。

 今年度は友人のおかげで年間席札を入手できたのですが、それでも毎回欠かさず聴きにいくのは調整が結構難しい、次年度は席札をあきらめて、聴きたいときにその都度チケットを手配することにしました。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.