南光こごろう親子会

 4月9日(土)、サンケイホールブリーゼで開催された(第三回)南光こごろう親子会へ行ってきました。大阪のサンケイホールと言えば1952年に関西初のコンサートホールとして開設されたとのこと、クラシック音楽のコンサートのみならず、とくに落語好きには米朝一門のホームグラウンドとしてなじみ深いところ。1971年の第一回桂米朝独演会は、「ホール落語」という形式を日本に根付かせたものとしてあまりにも有名。そのホールも老朽化によって閉鎖が決定、最後の公演が2005年7月18日の第16回米朝一門落語会、そのときの印象は今も鮮やかに残っています。2008年にブリーゼタワーの7fに改めてオープンしたわけですが、今年もこの後吉弥・塩鯛・米團治と独演会が続き、一門の落語会も季節ごとに番組が組まれて活況を呈しています。新装なったホールですがやはり設計がいいですね、全体を黒で統一された内装は落ち着きがあって大変結構、とくに椅子の大きさと配置については言うことなし、私は1fの後ろから5列目でしたが、前の客がいっこうに気にならず高座を満喫できました。ただ、大阪駅から西梅田方面の地下街はここ数年キタ全体の再開発が続く中、ずいぶんと印象が変わりました。私のようなものにとってはいささかオシャレ過ぎて、用事が終われば一刻も早く離れたいという雰囲気。昨日も終了後にすぐに脱出、阪急西院で王将の餃子を買ってきて自宅でビール、やっぱりこれが一番。

 昨日の番組は次の通り。

二人ぐせ(桂鯛蔵
昨年8月に一門そろって襲名・改名、さん都から鯛蔵となってそれなりに落ち着きも出てきましたね。二人の友達が互いの癖を直すために賭をする噺、ストーリーは単純でオチも見えてしまうのですが、それでもオーソドックスな演出で通しきることでかえって笑いが生まれるのですね。余計なものは入れない、鯛蔵くん、なかなか結構なできばえの13分。
野崎詣り(桂こごろう
若いと思っていたこごろう君、いつの間にか20年を超えるキャリアを積み重ねていたのですね。このネタは、私にとってはなんと言っても三代目桂春団治。季候のよい春の噺で、船上と土手のそれぞれの登場人物の表現がとても綺麗であったのが印象的でした。私自身、こごろう君の話は何度か聞いていますが、正直これまであまり印象に残ったことはありませんでした。しかし・・・、う〜む、上手くなりましたねぇ。まずは「新快速」のマクラ(関西以外では通じにくいとは思いますが)でたっぷりと客席を沸かせた後、喜六・清八コンビが船上から土手を歩く野崎詣りの参詣者にけんかを売っては失敗する噺。船上での仕草が誠に結構で、土手との対比の空間構成が見事に表現されていました。途中、重要な言い立ての台詞をかんでしまったのですが、慌てることなくそれをも笑いにつなげたのは立派。ただ、少し気になったのは時々体を伸ばして角帯を下げる仕草。おそらくスリムな体のせいで帯が上がってしまうのでしょうが、本題とは関係のない仕草が入ってしまうのは興ざめの一因、何とか対処法はないものか、29分。
五貫裁き(桂南光
放蕩の限りを尽くした息子が親父の死後改心して八百屋の再興を志すが、元手捻出の奉加帳を巡ってのトラブル、奉行の味のある裁きで無事念願を果たすというストーリー。おそらく元は講談なのでしょうか、前半の後見人の家主の事情説明の一人語りが長くてダレ気味、実際、私の周囲では鼾すら聞こえてきました。しかし私にとっては初めて聞く噺、お裁きものではあっても、そこは武士を揶揄しながら大坂の庶民感覚の笑いを仕込み、後半は一挙に爆笑に仕立てていくのはさすがに南光流。生で聴けてよかった、51分。
中入り
崇徳院(桂こごろう)
アマチュアの落語好きならある程度なれた頃に一度はやってみたい憧れの噺の一つ(全くの主観ですが)、今夜のこごろう君、すっかり自家薬籠中の物とされて大変結構。従来この噺の難点の一つはオチにあると(私自身は)考えてきましたが、かといってそれに代わる物はなかなか浮かんでこない。今夜のこごろう君、オーソドックスなオチではありますが、オチ前の熊五郎と相手の頭領とのやりとりの中で「借家五軒に三百円」を両者に共通の褒美とし、鏡が割れてもどちらも金があるから買えるという了解の上で下げていました。これからは、こごろう君ではなくこごろうさんと呼ぶようにします、36分。

 今頃再確認したのですが、ざこば一門は上方落語協会に復帰していますが、南光・こごろう師弟はまだ戻っていなかったのですね。このあたりは、天満天神繁昌亭落語家名鑑で確認できます。

【追記】
 私は具体的な物の整理や管理が大の苦手、具体的には落語会のプログラムなど、記念に残したいとは思っていてもついついファイルが散乱・消滅することがしょっちゅう。ということで、今年からはスキャナーでpdf化し、Evernoteに保存することにします。とはいえ、先日の市民寄席のプログラムの保存を忘れていたことに今気づきました。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.