立川談春を堪能しました

 立川談春独演会、京都では4月29日(金)30日(土)の両日開催(京都府立府民ホール・アルティ)、幸い29日のチケットがとれたので聴いてきました。東京の噺家さんの事情に疎い小生が彼の名前を知ったのは、著書・赤めだかを平積みの書店で見かけたときですから、2008年4月の発売直後のことでしょうね。興味を持ってDVD・伝承というドキュメンタリーを購入し、やっと生で聴く機会を得たのが昨年春の京都府立文化芸術会館開館40周年記念の落語会。ただし、その時は限られた時間で顔見せ程度のこと、今回やっと彼の噺をしっかり聴くことができました。うん、やはり上手いです。満足しました。帰りに飲み屋に寄っていればそのまま2時間はその話題で盛り上がっていたことでしょう。今年の連休初日は、上々のスタートとなったのでした。

牛ほめ(立川しゅんた)
一門の系図が見当たらないのでお名前の表記が確認できません、間違えていたらごめんなさい。上方では褒め言葉を自分で紙に書くのですが、彼の演出では父親が与太郎のために書いてやるのですね。確かに、難しい文句を聞いたまますらすらと自分で紙に書くというのは以前から少し引っかかってはいたのです。むしろ、このような演出の方が自然な気もしますね。まだ前座ですから当然ですが、与太郎の馬鹿さ加減の表現から、かえって父親が若すぎる印象を持ってしまうのですが、時間が解決してくれるでしょう。素直な口座は結構でした、15分。
棒鱈(立川談春)
マクラが少し緊張気味でしたね、震災後の東日本の空気を表現しづらいのか、なかなか調子が出ない感じ。師匠の話・米朝の話で様子を探りながら、何とか江戸・大坂・京都の三都に同時に落語が誕生したという話から、「棒鱈」に入っていきました。田舎侍のなまりとひどい唄に、隣室の江戸っ子が腹を立てて喧嘩になるというストーリー、生で聴いたのは初めて。幕末から明治にかけての江戸庶民の感情をベースにした話ですが、同じ時期に大量の田舎侍を受け入れていた京都では、果たしてどのような受け止め方をしていたのかと、いささか比較文化論など語る欲望に駆られてしまいますね。本題に入ってからは安心して聴けました、45分。
中入り
紺屋高尾(立川談春)
映画にもなり芝居でも上演されるあまりにも有名な話、ただし、上方落語の「高尾」は江戸の「反魂香」。こちらは三代目桂春団治の十八番で、角座の舞台で聴いています。個人的には松竹新喜劇、藤山寛美と酒井光子の舞台が懐かしい、ただし、こちらは中座ではなくテレビ中継でしたが。さて、今回はネタ出しされていないので何をやるのかと待っていたところへ、マクラもそこそこにいきなり「高尾太夫に会いたい」と、をを、紺屋高尾だ!後は、何も考えずに噺の世界へ浸りきり。とにかく口調がいいので聴きやすい、親方の戸惑いと夫婦のやりとりでたっぷりと笑わせて、三浦屋での太夫の部屋では誠実な久蔵をストレートに、大変メリハリのきいた展開はだれることなく大団円。さすがは独演会と納得させる61分でした。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.