城下町松江と足立美術館を楽しみました

 今年の夏の小旅行、8月20日(土)21日(日)の2日間、島根県松江市の城下町散策と安来市にある足立美術館を見学してきました。松江には4年前の夏に家族で来ているのですが、その時は出雲が主目的地。一昨年11月と今年の1月にも来ていますが、こちらは入試業務のため観光なし。実質的に、ゆっくりと街を楽しむのは初めてのこととなります。足立美術館には以前から関心があったのですが、予想以上に素晴らしい。幸い暑さも遠のいて、気持ちよく二日間を過ごすことが出来ました。

 今回の行程は次の通り。

  • 8月20日(土)
  • 八雲庵
    午前8時に自宅を出発、4時間30分のドライブで松江市内着。さすが夏休みと言うべきか松江城周辺は結構な混雑、少し距離のある城山西駐車場に車を止めてまずは腹ごしらえ。昼食なればやはり出雲そば、旧武家屋敷を改装したという八雲庵へ。ここは鴨南蛮と割子そばが名物とのこと、私が選んだのは天ぷら割子そば。三段になったそばと天ぷら、それに小さな椀は鴨南蛮のだし、ここへ小さく添えられた薬味がらみのそばを入れてミニ鴨南蛮としていただく(のだと思う)。そばも天ぷらもなかなか結構、ただ、このミニ鴨南蛮がその後大きないたずらをすることに。
    松江歴史館
    松江の街を歩くのは実質的に初めて、まずは資料館で基礎学習。本年3月にオープンしたばかりの松江歴史館「松江城の東に隣接し、江戸時代には松江藩の家老屋敷が建ち並んでいた場所にあり...現在は、松江市の伝統美観保存区域に指定されており、武家屋敷や小泉八雲旧居・記念館などにも近く、国際観光案内所を設置してまち歩きの拠点としての機能を備えて」いるところ。まずは「基本展示室」にて「松江藩政や城下町の形成、城下の人々の暮らし、藩財政を支え松江を全国有数の富裕藩にした産業などを」学習しました。
    松江城
    下準備が出来たところでまち歩き開始、今回は3時間で城下町の雰囲気を味わうことがテーマ、松江城+小泉八雲旧居・記念館+武家屋敷の各施設の共通入場券をゲット、まずは松江城の天守閣を目指します。松江城の概況については、ウェブサイトの記述をお借りしましょう。

    水郷松江市の宍道湖北畔にそびえ立つ松江城は、松江市のシンボルとして市民に親しまれ、城山公園は憩いの広場として愛されています。
    特に、天守閣からの眺望は360度見渡すことができ、眼下の町並みや宍道湖の眺めはすばらしく、旅人の心を癒してくれます。
    国指定重要文化財である松江城天守閣は、現存する全国の城の中で、平面規模で2番目、高さで3番目、古さで5番目を誇り、安定感のある武骨な体裁ながら、その端正で優雅な風格は人々を魅了します。

    前日までの暑さはだいぶましになっていたとは言え、天守閣までの道のりと建物内の階段を上っていくうちに(小さな)滝のような汗。しかし、天守閣最上階は見晴らしがいい上に風通しも最高、高齢者にとってはバリアフルですが、とても気持ちのいい空間です。

    小泉八雲記念館
    天守閣から、先ほどの八雲庵の方へ戻った当たりが塩見縄手、こちらの解説もウェブサイトから。

    松江の中で最も城下町の風情を残す通りです。松江市の伝統美観地区に指定されています。「縄手」とは縄のように一筋に伸びた道を言い、中級武士であった塩見小兵衛が異例の栄達をしたことを称して名がつけられたと言われています。この通りのどこかに、縁結びスポット「ハートのくぐり松」が!
    このくぐり松をくぐって近くのポストに手を入れると送った人も送られた人も幸せが訪れるという噂が・・・

    この記念館では、小泉八雲の生涯・著作・松江での暮らしぶりなどが紹介され、さらに、展示室の一角では小泉八雲の「KWAIDAN―怪談―展 翻訳本と映画の世界」という特別展が開催中。ところが、こちらに入ったとたんに急な差し込みが・・・、察するところ昼食時の鴨南蛮の油の強さが原因か(どうかは分かりませんが)。落ち着いて展示を見る余裕もなく一人で記念館を出て、道路反対側の公衆トイレに駆け込みました。私は食べ物にはかなり敏感で、刺激の強いものや苦手なものを食べるとえてしてこのような結果に、八雲さん、ごめんなさい。ちなみに上記解説にある「ハートのくぐり松」は観光客がしきりに写メを取るポイント、人がたくさんおられるので、その隣の松で記念撮影、いまさら縁結びでもないわけで。

    小泉八雲旧居
    記念館に隣接するのが八雲旧居、こちらもウェブサイトの解説を見てみましょう。

    八雲は1890(明治23)年中学校教師として赴任。「耳なし芳一」や「雪女」などの名作を残しました。松江での1年3カ月間在住のうち、1891(明治24)年から5ヶ月間セツ夫人と暮らした家です。八雲が好んで眺めた庭園がそのまま残されています。

    彼が好んで眺めた庭園というのが素晴らしい、いや、庭園と共にある屋敷が何とも心地よい空間で、しばし床の前に座して三方の庭園を眺めるという至福の一時を味わったのでした。

    武家屋敷
    八雲旧居を出て八雲庵をさらに越えてすすむと武家屋敷、個人的にはこの施設が最も興味深く拝見できました。江戸時代の中級藩士の屋敷とのことですが、当時の暮らしぶりが普通に表現されていてとても結構。こちらも解説を引用します。

    約270年前の松江藩中級藩士の屋敷で、刀箪笥やお歯黒道具など家具調度品、生活用具などを展示しています。
    玄関や座敷部分の立派な造りに対し私生活部分が質素であることなどから、公私のけじめをつけていた暮らしぶりがうかがえます。また、江戸時代の武家の屋敷は持ち家でなく、役職が変わる毎に住み替えになりました。(現在で言えば会社の社宅のようなもの)
    現在の屋敷は1733(享保18)年の大火で焼失後再建されたもので、築後約270年経っており、母屋は松江市の指定文化財(建造物)になっています。

    車をとめてから武家屋敷の見学終了まで約4時間、城下町松江の全体像を把握し、往時の面影を色濃く残す塩見縄手一角の散策を終えることが出来ました。この頃までにはお腹の具合も回復し、予定通り宿舎へと向かったのでした。

    小料理 想ひ出
    今夜の宿は松江大橋北詰近くのルートイン松江、観光協会の「松江まちあるき」では松江昭和ノスタルジィとよばれるルートの一角にあります。立体駐車場の順番待ちで若干手間取りましたが、部屋に入ったのが17時15分、すぐに用意して周辺散策。街の雰囲気を感じた頃にはそろそろ18時、いろんな飲食店の看板に灯りがつくころ、今夜の食事(=酒)の店に選んだのは松江大橋北詰近くの「小料理 想ひ出」。今回は事前の情報収集をしなかったのですが、土曜日の夜ということで、早めに開いている店に入ろうと直感的に決めた店。日本海の魚をいただくという趣旨からすれば正解、いただいたのは、刺身盛り合わせ・ボッカ煮ブリカマ塩焼き・トウモロコシの天ぷら、それにビールと芋焼酎。刺身はイシダイとイカが美味しく、出来れば日本酒といきたかったのですが、時間が早いこともあって、大人しく喜六をロックで2杯。1時間弱で店を後にし、近所のローソンで地酒を仕入れてホテルで2次会という誠に冷静かつ経済的な一夜となったのでした。
  • 8月21日(日)
  • 足立美術館
    ホテルで6時半に朝食、駐車場が混雑する前に早めにチェックアウト、目指すは安来市にある足立美術館。途中コンビニで時間をつぶしながら駐車場に着いたのは8時30分、開館まで30分もあります。ところが、その時間でもすでに観光バスがひっきりなしにやってきては、バスを降りた人がぞろぞろと美術館へ。どうやら、ツアー客には柔軟な対応をしているようですね。8時58分にチケットを購入し、音声ガイドを用意して9時丁度に鑑賞開始。嬉しかったのはこの音声ガイド、近頃は美術館や博物館では必ずと言っていいほど用意していますが、こちらのものは500円で二人同時に使用できますとのこと。何より経済性を重視するツレアイはいたくこれを気に入り、以後3時間半の間、イヤホンのコード以上には離れられないという至近距離での鑑賞と相成りました。
    正直に申し上げれば、私自身はこちらの美術館に対して「田舎の成金が横山大観の作品を金に任せて買い集めたコレクション」といった、勝手なイメージを持っていたのです。ところが、中味は全く異なっておりました。まずは創設者の足立全康氏、少年の頃から苦労しながら商才を発揮し、やがては大阪で繊維・不動産業界で成功を収め稀代の美術品コレクターとなるわけです。その成功のスタートは炭と炭団で財をなすという、まるで落語の「胴乱の幸助」に登場する「割木屋のおやっさん」そのもの、この事実を知った瞬間、私はこの人物のファンとなってしまいました。
    この美術館を有名にしたものは日本庭園と横山大観コレクション、と勝手に思っていたのですが(もちろんその通りではありますが)、それ以上に驚かされたのが河井寛次郎北大路魯山人のコーナーがそれぞれ設けられていたこと。中でも魯山人の「魚形箸枕」には感動、箸置きを「箸枕」と表現するこの方の感性に脱帽です。
    と、事細かに綴っていくときりがないのですが、もう少し距離が近ければ何度も通いたいと思わせられる素晴らしい美術館です。来年からは山陰の小都市を楽しみ、帰りに足立美術館に立ち寄るという、そんなメニューをしばらく続けてみたいと正直思ったことでした。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.