第23回桂南光独演会

 関西以外の方にはぴんと来ないかも知れませんが、関西に住んでいると桂南光さんのあのだみ声を聞かない日はありません。それほどメディアへの露出が多い方ですが、落語への取組も熱心です。故枝雀さんの一門を引っ張るリーダーかつ米朝事務所の常務という多忙な日々の中、京都で23回目となる独演会が昨晩開催されました。会場の京都府立文化芸術会館は固定席419席というホールとしてはほどよい大きさ、昨晩はパイプ椅子の補助席も出る大入り、結構な会でありました。ただ、「独演会」と銘打ちながら他に3人の噺家が登場するというのはちと気になるところ。もっとも、ここら辺りは事務所の常務としての配慮故かも知れません。ともあれ、今年還暦を迎えられる南光さん、ますますのご活躍をお願いかつお祈りいたします。

 昨晩の番組は、次の通り。

軽業(桂吉の氶
故吉朝さんの七番目(=最後)のお弟子さん、入門10年目。先日塩鯛さんの会で鳴り物の解説コーナーがありましたが、熱心に太鼓をたたいておられました。今夕は東の旅から軽業、笑いをとれる咄ではありませんが、見台・小拍子・タタキ・せんすなどの使い方を学ぶための上方落語では必須ネタ。精一杯演じて気持ちのいい高座姿でした、16分。
真田小僧(桂米紫
塩鯛さんの筆頭弟子、師匠との同時襲名でこの名前もすっかり馴染んできましたね。このネタは江戸落語ですが、上方でもやられるのですね。こどもを扱ったネタの代表的なものですが、初天神のような可愛さが余り感じられず、個人的にはあまり好きではありません。米紫さん、確かに勉強熱心でけっこうですが、私にはどうにも目に五月蠅いのですね。細かな動きが多すぎて、それが気になって咄に乗りきれないことが多いのです。ついつい、膝が座布団から前に落ちてしまって、そのためどの人物にも落ち着きがありません。もちろん、それでも多くの方に受け入れられているのならいいのかもしれませんが、17分。
ふたなり(桂南光
ふたなりという言葉、日常生活ではほとんど使われず、ご存じない方がかなりいらっしゃるのでは。私自身も、多分米朝全集の解説でその意味を知ったような気がします。おやっさんが首を吊った後、死骸を検分すると懐から女手の書き置きが出てきたために「ふたなり」と断じられる、つまり両性具有ということですね。おやっさんが家出したむすめに首つりの仕方を教えるところが聴き所ですが、そこにもタンゴという言葉が登場して、この現物も今やなかなか目にすることがなくなりました。それでもいかにも落語的な発想は面白く、小品ながら好きな咄の一つです、40分。
中入り
悋気の独楽(桂米左
気がつけば米左さんも四十代後半、三十年近いキャリアになりますね。地味な存在ではありますが、古典芸能全般に造詣が深く、咄に奥行きがあってなかなかの実力者。今夜の悋気の独楽では、ごりょんはん、おてかけさん、女中さんと三人の女性が登場しますが、それを上手に描き分けて大変見事。ただ、旦那の供をした定吉が妾宅を出てから、懐の駄賃を確認する台詞がなく、そのため店に戻ってからの「50銭の義理」という言葉が通じない。はしょったのかミスなのか分かりませんが、ちょっともったいない気がしました、26分。
いたりきたり(桂南光)
故枝雀師は、一時期SR(ShortRakugo)に凝っていた時期があって、関西の落語ファンが作品をラジオの番組に投稿して盛り上がるという現象が(かつて)ありました。今夜の南光さん、そんな師匠との出会いから入門・同棲・(師匠の)結婚というヒストリーをたっぷりと語った後、SRの代表的なものを紹介してからやっと本編へ。南光さんによれば枝雀さんがこのネタを演じたのは3回しかないとのこと。私自身の記憶が曖昧なのですが、枝雀寄席で放送したことがあったような・・・。ともあれ、一時期の枝雀さんの世界観が反映された言葉遊び、本編は15分程度ですが、師匠を偲ぶ37分間の熱演でした。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.