桂ざこば独演会(2011年10月9日)

 世間は三連休のど真ん中、天気は上々気温も上昇、あちこちで運動会の歓声が聞こえます。そんな中、大阪・サンケイホールブリーゼで開かれたざこばさんの独演会に行ってきました。JR京都駅は観光客であふれかえって、歩きにくいことこの上なし。大阪駅で下車後桜橋出口から会場までは地下街を一直線、こちらでは天気も喧噪もほとんど気にはなりません。開場5分前に会場着、幅広い年齢層の老若男女が詰めかけての盛況です。ロビーのグッズやドリンク販売は一切無視して席に着き、受付でいただいたチラシ類もまとめて座席の下、余計な誘惑を一切断ってプログラムの確認、サンケイホール初代支配人の文章に年輪を感じました。終演間際に地震発生、場内が少しざわつくことがありましたが、そのまま下げて無事閉幕。帰宅して息子に聞いてみると、地震など知らなかったとのことでした。

 今日の番組は、次の通り。

うなぎや(桂そうば
ざこばさんに入門して丸6年、福岡出身は関西では珍しい。非情にさわやかな声と語り口、前座ではありますが無理に声を張り上げるのではなく、大変明るく好感の持てる高座姿。ただ、十分に大阪弁になり切れていないところが所々出てきます。マクラで一門のカラオケの話題がありましたが、ざこばさんが「おまえ、まだうたっていないやろ」と言うはずがない、「おまえ、まだうとうてないやろ」というはず。話に入るとイントネーションの微妙な違いが気になります。うなぎ屋の板場(いたば)は大阪弁なら後が上がりますが、かれは前にアクセントがあって落ち着かない。もう少し時間がかかるとは思いますが、上方落語をやる以上はやはり大阪弁らしく喋っていただきたい、16分。
ざっこばらん(桂ざこば
咄をやらないときはこのタイトルでの漫談、ざこば風味の放談ですね。とはいえ、中味は定番となっている家族ネタ、お嬢さんの離婚のことも入れながら、途中、1歳半のお孫さんが舞台に登場するというおまけ付き。お孫さんがいらっしゃる年配の方には頷けるでしょうが、こうあちこちで同じ事をやられるといささか食傷気味ではあります、25分。
掛け取り(桂千朝
入門してかれこれ40年近くになる、当たり前ですが大ベテラン、故・吉朝さんともども芸人さんの物まねでは定評がある方です。ただ、咄はと言うと彼一流の間があって、好きな方にはたまらないでしょうが、私にはどうしても合いません。キャリアも技術もある方ですが、どうしても寝てしまう(ごめんなさい)。外では運動会の歓声が聞こえようかというこの時期に、大晦日の借金取り撃退というこのネタは、ちょっと早すぎてそぐわないのでは、25分。
狸の化寺(桂ざこば)
一席目に雑談が多かったのでマクラなしですぐに本題へ、ただし、黒鍬という言葉の意味だけを先に解説。今回は明治初期に廃刀令後の武士集団などが従事したという解説をされていましたが、これにはもう少し丁寧な説明がいりますね。何らかの資料をご覧になったのでしょうが、江戸期からある組織ですから誤解されるとちと困る。村の堤防修理を請け負った黒鍬組が寺を宿泊場所として、そこに住みついている狸を退治する咄。米朝師の口演しか知りませんが、本堂の天井を動き回る天女の説明をするところ、ちっとも言葉になっていない。それでも聴いて笑っていただけるのはざこばさんの芸、これはこれで味のあるものですね、24分。
中入
子は鎹(桂ざこば)
ここ数年ざこばさんが力を入れておられる咄、江戸の子別れの後半部分。東の演者がやると子どもを子ども口調で表現しながら、そのあどけなさと健気さで涙を誘います。こちらはあくまでざこば流、最初は両親との対比で子どもらしい表現になっていますが、後半は親父と息子の口調は変わらず対等に喋ってしまいます。それでも会場は爆笑の渦、普段から家族ネタで笑いを取っているだけに、子どもが両親を再び結びつける役割をするこの咄、江戸の「子別れ」とは別の、あくまでもざこばの「子は鎹」として世間が認知したと言うことでしょうか、29分。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.