ユーモア>リアリズム

 前回の映画は祇園祭ど真ん中の7月15日、この時は見事に裏切られましたが昨日は大正解。ちょうど50年前のフランスを舞台にした屋根裏部屋のマリアたち、フランコ独裁政権下のヨーロッパの時代と空気をユーモアで表現した佳作。京都シネマ側の紹介は、

1962年、パリ。ジャン=ルイは証券会社の経営者。妻シュザンヌは悠々自適の有閑主婦。しかしある時フランス人メイドが辞めてしまい、家の中は渾沌を極める。そこにやって来たのがスペイン人メイドたち。陽気でパワフル、勤勉で文句も言わない、そんなスペイン人女性たちが巻き起こす騒動とは!? 移民問題を背景に、希望にあふれる社会派コメディ。

私はペア割引の1000円で入場しましたが、1800円払っても損はないと思います。

 物語はスペインからギュウギュウ詰めのバスに乗って、ヒロインのマリアがパリに出稼ぎにやってくるところから始まります。時は1962年、まさに日本でも地方から「金の卵」の中卒者が集団就職で都会を目指した頃でした。この頃私は小学校低学年、我が家にも周りから少し遅れてテレビや洗濯機という電化製品が登場し、世の中全体が活気にあふれてオリンピックを迎えようとする時代の空気を覚えています。スペイン内戦後にフランコが独裁を続けたのは1939年から1975年の長きにわたりますが、映画ではパリで働くスペイン人たちの日曜日のミサで、機関紙を宣伝するコミュニストの姿なども描かれています。他方、雇い主の食卓ではスペイン人メイドの用意する食事を食べながら、「内戦、なにそれ?」というブルジョワの日常とそれに違和感を覚え出す雇い主の変化を描いて行くのです。いったい、なぜ今このような映画が作られたのか? 誰しも気になるところですが、監督のインタビューでは、

――この企画はどのようにして生まれましたか?
全ては子供時代の想い出から始まりました。私の両親がルルデという名のスペイン人の家政婦を雇い、子供時代の最初の数年間を彼女と一緒に過ごしました。自分の母親よりも長い時間を彼女と過ごしたので、話し始めた時にはフランス語とスペイン語を混ぜていました。幼稚園に入った時、理解不可能な混成語のようなものを話し、スペイン語の祈りを暗唱していたのです。小さかったこの頃の正確な想い出はないのですが、母親が話をしてくれましたし、自分の中にも何かが残っていました。それからスペインに旅行をした際に、1960年代のパリでの生活を話してくれた女性に出会い、きっかけがやってきました。

最終的に私たちの物語はド・ゴール大統領時代のフランス、アルジェリア戦争が終焉を迎える1962年を舞台にしています。それほど昔ではない時代ですが、別の年代、別の世界なのです…

 フランス人にとっても「別の世界」となった50年前、もちろん、私が相手にする女子大生たちにとっても東京オリンピックは「別の世界」。脚本・監督のフィリップ・ルイ・ゲイが今の時代に「別の世界」をユーモアを通して描いたように、私自身ももう少し工夫を凝らしたパフォーマンスを教室で展開、「別の世界」「別の年代」への理解を実現したいと思ったことでした。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.