桂吉坊がきく藝

 今日の私のミッションは、インフルエンザ緊急対策本部の待機役、午前9時から午後7時まで、何かあった場合に対応するために学内にいるわけです。もっとも、何かあれば連絡していただくことにして、自分の研究室で(かなり)急ぎの仕事の書類作りをするつもりでした。んが、結局ついつい気になってこの本を一気に読了、いやぁ、おもしろかった。桂吉坊は故・吉朝のお弟子さんで、童顔ではありますが入門10年にしてその将来を嘱望される上方落語界のホープ。私も何度か聞いていますが、きっちりとした稽古に裏付けされた本格的な語り口は、同期の桂まん我ともども大変魅力的。その吉坊が朝日新聞社発行の「論座」の仕事で、東西の藝の達人たちへインタビューしたものをまとめたもの。いやぁ、おもしろいですねぇ。何がおもしろいかというと、祖父と孫(or曾孫)というくらいの年齢差がありながら、ちゃんと藝の上での質問が出来ると言うこと。つまり、大変な勉強家なのですね。府立東住吉高校芸能文化科卒業というのも嬉しくて、私の学生にも彼の後輩が一人います。もちろん、分野によって突っ込みの深浅の違いはありますが、こんな仕事が出来たと言うこと自体が、彼にとっては大変な財産となるでしょう。落語好き、古典芸能好きの方はぜひ一読を。もちろん、画像リンクをクリックしてお買い求めくださいね。
“桂吉坊がきく藝” の続きを読む

落語家論

 このところの私は、すっかり小三治です。通勤車内の読書、今朝読了したのが「落語家論」(ちくま文庫)。これは、民族芸能を守る会という団体の会報に連載されたものを2001年7月に単行本出版、2007年12月に文庫化されたもの。正確には調べていませんが、1980年代前半の執筆のものがありますから、40代の小三治師が若手の噺家に向けて発するメッセージと言うことになります。中味は多岐にわたって、後年の「ま・く・ら」と重なる記述も散見されます。私が一番惹かれたのは「鼻濁音のお話」、落語に限らず歌手も含めて日本語の美しさについての言及があります。ゆーみんや松田聖子は濁音で歌も下手だが、内藤やす子・高橋真梨子・加藤登紀子とくると歌によって見事に濁音・鼻濁音を使い分けていると。あるいは、大まかに言って名古屋より西は濁音の世界と言われるのに、笑福亭仁鶴は見事な鼻濁音使い、直接質してみると、若い自分に小米(枝雀)たちと「きれいな言葉を使おう」と話し合ったことがあったとか。加えて、米朝・小文枝、そしてどろどろの大阪を代表する六代目松鶴までもが見事な鼻濁音使いであるという発見、これをもって、東京の落語家に鼻濁音を使えずして江戸の話が出来るのかと問いかけるわけです。巻末の小沢昭一の解説も含め、なかなか読み応えのある一書、いかがですか、ぜひ画像リンクをクリックしてお買い求めください。 😛
“落語家論” の続きを読む

長い一週間でした

焼かないだし巻き 今週はイベントおよび会議が続き、とても長く感じた一週間でした。月曜日は「5月の誕生会」のために早めにかえって支度しましたが、火曜日から金曜日まで22時台の帰宅、珍しく夕飯を作れない毎日。昨日の土曜日も必要があって出勤しましたが、さすがに早めに退出しての夕飯づくり。気分転換も兼ねて、少し頑張りました。このところ、安くて見栄えがするため好んで作るのが「焼かないだし巻き」。鍋に出汁を沸かして、そこへ溶き卵を入れて固め、巻き簀で形を整えるというもの。写真はいささかピントがぼけていますが、それなりにいいものに見えるでしょう? 出来たてはもちろん、冷めても美味しいところも嬉しい。「干物で作るしめ鯖」同様、ここしばらくは来客メニューの定番です。他には「キャベツと豚バラの簡単煮」「アラメの煮物」「小松菜の胡麻和え」「ほくほくサツマイモ」と、みな十分満足できる仕上がりでした。
“長い一週間でした” の続きを読む

小三治

 京都みなみ会館で9日(土)から始まったドキュメンタリー映画「小三治」、早速観てきました。彼は落語家としてはじめて人間国宝となった5代目柳家小さんの弟子で、立川談志の弟弟子にあたる人。残念ながら私は生で聴いたことはありませんが、独特の間を持つ人で、聞き手に緊張を強いる談志の芸風とは正反対。若い頃は目線の鋭さがとんがった印象を与えていましたが、いまは哲学者然とした風貌がいい味わいとなっています。以前、枝雀さんが亡くなった時の逸話ですが、訃報を聞いた時に「苦しんでいるのはおめえだけじゃねぇんだ」と言ったとか。これも有名な逸話でご本人が喋っていますが、師匠である小さんが彼の噺を聞き終えた後ぽつり、「おめえの噺は面白くねぇなぁ」。この言葉が、彼のその後の落語との戦いのバネとなっているのでしょう。私自身は、面白いと言うよりも「おかしみ」を持った人と受け止めています。苦しみの後からにじみ出てくるおかしみを感じさせてくれる噺家さんであり、喋らなくてもじっと顔を見ているだけでいつしか微笑んでしまう、そんな印象を持っています。映画の中では彼の落語観・芸談が随所で披露されますが、結局はたった一つのこと、それは芸ではなく人間が大事と語っているわけです。落語に興味のない人にもぜひご覧頂きたい、いい作品です。
“小三治” の続きを読む

第204回上方落語勉強会

 通勤経路の阪急京都線・千里線は、中高生の春休み突入で普段よりも幾分混雑も緩和され、沿線の桜開花状況を楽しんでいます。しかし、大学はそろそろ在学生向けのオリエンテーションが始まる時期、私の職場も明日からのオリエンテーションに向けて準備をしています。とはいえ、今日は早めに退出して友人諸氏と久々の落語会。京都府立文化芸術会館で開催された、第204回上方落語勉強会へ行ってきました。この会は、スタートしたのが私が大学へ入った頃、非常に息の長い会です。和室のキャパシティは100人程度、私たち5人は後ろ3列に用意された長いすの真ん中に陣取っての鑑賞、満足のうちに終わる頃にはお腹がグーグー、タクシーを飛ばして大丸南の楽仙楼で遅めの夕食。これも遅めの仕事帰りのsampe氏も合流して、春の夜の小宴会と相成りました。名物の水餃子はもちろんですが、最後に食べたラーメンが美味しかった!
“第204回上方落語勉強会” の続きを読む

第二回 京の三条寄席

カレーマフィン 何かと忙しくて朝のコーヒーを味わうこともかなわぬ日が続いておりましたが、やっと土曜日の朝、久しぶりにのんびりとした朝食でした。このところ恒例化した朝のマフィン、ハム・チーズ・レタスを挟むのですが、普段は粒マスタードを塗るところ、夕飯に用意していたカレーを使ってみました。気分も変わってまた結構、家で飲むコーヒーは本当に美味しい。豆はいつものびーんず亭(ただし、今はharimayaさんからの差し入れでいただいたもの)、こちらのオーナーは私の今の髪型のモデルであったりします。週末ならではの用事をいくつか済ませ、夕方からは京都文化博物館で開かれた「第二回 京の三条寄席」へ行ってきました。本来ならばnonkiさんのチケットなのですが、仕事が入ったとかで急遽ピンチヒッター。博物館6階の和室は300名の人で超満員、楽しく過ごすことが出来ました。nonkiさん、申し訳ないけど、ありがとう!
“第二回 京の三条寄席” の続きを読む

伝承というドキュメンタリー

 普段の食材以外の買い物は、その多くをamazonあるいは楽天を利用します。当然のように、いろんなDMが日々届くわけですが、そのほとんどはパス。しかし、落語関係のものはつい見てしまいますね。先日のDMで思わずクリックしてしまったのがこれ、立川談志 立川談春 親子会 in 歌舞伎座 ~伝承というドキュメンタリー~ [DVD]。昨年6月28日に歌舞伎座で行われた親子会の模様を収録したものですが、いやぁ感動しました。私は東京の噺家さんの動向には疎く、談春という名前を知ったのは、たまたま書店で手に取った赤めだかという本の著者として。「第24回講談社エッセイ賞」を受賞したということで書店に平積みになっていたものを購入したのですが、これはこれでなかなかのもの。この談春という人、とんがった芸風の師匠・談志に対して、若いけれど(それ故に)柔らかく、しかし志ん朝の華やかさとは明らかに違う立川流の骨太落語。2枚組のDVDには落語三席の他に、当日の舞台裏の様子や関係者インタビューもあって、かなり楽しめます。次回の拙宅での落語勉強会用に、いい教材が手に入りました。
“伝承というドキュメンタリー” の続きを読む

第1回 桂文我独演会

アサリとキャベツの酒蒸し 三連休の最後は寒い一日、夕方から京都府立文化芸術会館で行われた、第1回桂文我独演会へ行ってきました。枝雀さんに入門して今年で30年、雀司から文我を襲名して13年、いまや風格さえ感じさせる上方きっての勉強家。出身が三重・松阪市、私にとっては8年間単身赴任した懐かしい街、松阪での文我襲名公演にも行きました。今夜は東の旅を紹介する番組で、三十石の通しは大変珍しく、意義深い一夜となりました。終了後は、同行したharimayaさん、norisanさんと一緒に拙宅での宴会。ツレアイお得意のカレー2種に私の新作は写真にある「キャベツとアサリの酒蒸し」、もちろん午前中に仕込みを済ませたもの。落語会以上の盛り上がりも適度な時間にお開きとなって、連休最後の夜はきわめて健康的な雰囲気のうちに終わろうとしています。
“第1回 桂文我独演会” の続きを読む

第293回市民寄席

イカ大根 12月7日(土)、京都芸術センターで開かれた市民寄席に行ってきました。寒い一日でしたが、会場内は満員の人で熱気むんむん、一時期の低迷が嘘のような人気ぶりです。着物姿のツレアイと終了後はロームのイルミネーションを見る予定、しかし寒さを理由に予定変更、まっすぐ帰宅して夜の忘年会の準備。一緒に落語を聴いたnonkiさん、harimayaさんも加わって賑やかな宴。そこへ急きょnorisanさんから手作りお菓子の差し入れ、いやぁ豪華な食事になりました。今夜のメニューは蓮根ハンバーグ・イカ大根・紅白かぶサラダ・明太子とキュウリの酢の物・ヤーコンのサラダ。後で追加のトマトニョッキ、ドリンクはワイン3本、う〜む、ちと食べ過ぎか。ニョッキ以外の料理の写真はflickrでご覧ください。

 myonckr’s photostream
“第293回市民寄席” の続きを読む

次に行きたいのは?

 9月5日(金)午後8時、NHK関西ローカルで放送されたかんさい特集『苦節を笑いに変えて 〜桂米朝一門 60年の軌跡〜』、ワインを飲みながら見ておりました。記事のタイトルは、番組最後の方で紹介されたどこかの落語会での客席からの質問、『次に行きたいのは、地獄or極楽』、我が米朝師の答は「楽屋」、見事な芸でありました。

 落語家で人間国宝の桂米朝さん(82才)。戦後まもなく四代目桂米團治に入門して、当時衰退していた上方落語の復興に尽力してきた。また多くの弟子を育て、一門は今60名を数える。しかし相次ぐ弟子の死など、その道のりは決して平坦ではなかった。今年秋、長男の桂小米朝が五代目米團治を襲名。一門は新しい時代を迎える。
 米朝さんと一門のこれまでと今を取材し、上方落語の継承される姿を描く。

“次に行きたいのは?” の続きを読む