柳家三三独演会(2011年10月14日金曜日)

 上方落語とは長年の付き合いがありますが、江戸落語については長い間「偏見」があって、なかなか聴く機会がありませんでした。縁あって古今亭菊六さんの京都の会を手伝うことになったのをきっかけに、関西で時間と(お金の)都合がつけば足を運ぶように。その中で楽しみなのが柳家三三さん、はじめて聴いたのが昨年の春、そして今年の一月七月には繁昌亭で吉弥さんとの二人会を楽しみました。これまでに聴いた演目は、五目講釈・橋場の雪・真田小僧・抜け雀・湯屋番、それぞれ楽しませていただきました。ぼそぼそと早口で喋りはじめるのですが、ネタに入れば人物の描き分けはしっかりとして崩れず、何よりも流ちょうな立て弁が素晴らしい。お馴染みのネタを特に何処をどう工夫したなどということを(あまり)客に感じさせず、それでいてしっかりとつかんで聴かせる力量は大したもの。次回の大阪独演会は来年4月18日(水)19日(木)、小遣い節約してチケットゲットしたいですね。

 今回の番組は次の通り。

三枚起請(柳家三三)
今年の夏に柳家さん喬師で、この噺を聴きました。時代背景は異なっても女が手練手管で男をだますという構図は不変のもの、この噺が寿命を保っている所以です。上方版では、起請文の中の文字が抜けていたり「下駄屋喜六様」という具合に男の名前が入ったり、起請文そのものに女の客あしらいのしたたかさが盛り込まれていて、一つの聴き所。江戸版ではこのような演出はなく、むしろ後半の山場へむけて徐々に盛り上げていく、個人的には上方版の方が楽しくて好きですね。しかし三三さん、三人の男と女の対決の最後の場面、狭い部屋でのそれぞれの男の立ち位置と女の方からの視線の動き、空間の表現が本当に素晴らしい。マクラの時間調整が今ひとつではありましたが、十分満足できる52分。
仲入り
文七元結(柳家三三)
江戸落語で聴いてみたい演目というと、やはりこの噺は外せませんね。映像では観ていますが生で聴くのは(多分)初めて、ネタに入った瞬間思わず(私の)体が前のめりになりました。親父の博打の借金のために娘が自分から進んで身売り、それで作った金を身投げしようとする商家の手代にやってしまうという、関西人にはちと理解しにくい江戸っ子気質を取り上げたた大ネタ。幾多の演者が、訳ありの大金を見ず知らずの他人にやるという行為を、自分と客にどう納得させるかと工夫を重ねてきた噺。独演会ならではのたっぷりと時間をかけての熱演は、他にも選択肢はあるだろうけれどもこんな時にはこうなってしまうのだろうと、観客を納得させるいい出来でした。小遣いやりくりしての前売り3500円、十分に満足させていただいた55分でした。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.