立川談笑師を初めて生で聴く

 俗に立川流四天王といわれる志の輔・談春・志らく・談笑、すでに志の輔・談春両師は生で聴く機会を得ておりますが、今日は初めての生談笑師。会場は大阪能楽会館、阪急梅田から徒歩圏ですが、普段梅田はカッパ横丁で呑む程度の小生には手強い会場でした。京都なら能楽堂と言えば大体周囲と調和したそれらしい佇まいであるわけですが、そこは大阪、環状線や幹線道路が交錯する一角にあって付近をうろうろすること10分強。入ってみると、能楽堂の舞台に向かって左側はさすがに落語の公演には不向きということで正面と右手の席が中心。それでも、開演時にはほぼ埋まっていることからして、やはり人気は全国区、期待を裏切らぬ内容で十分その実力と魅力を堪能させていただきました。

時そば(48分)
テレビ番組のレポーターとしての経歴と落語会開催で全国各地を駆け回る身、その中で出会った「怖い話」ですでに30分経過、本編は何かと探っていたのですが結局「時そば」。本人の弁にも「東京と同じテンションで」という通り、数カ所に東京落語ならではのくすぐり。会場からはそれなりの反応があるところからして、やはり大阪公演3回目にしてちゃんと固定客をつかんでいることがうかがわれます。個人的な印象では、この方は何と言っても声がいい。それ故、わざとらしい老若男女の使い分けなど不要、聴いていてとても心地いい時間を楽しむことができるのです。
紙入れ(30分)
一席目を下げてから、そのまま続けて二席目へ。場内に子どもが居るからというフリからして予想通りの方向へ、結局「紙入れ」に入っていきました。何しろ初めて聴くわけですが、名にし負う「改作の名手」、どのような落ちへ持って行くのかと聞き込んでいると、翌朝不安に駆られて旦那のうちでのやりとり。通常は女将さんの機転で手紙入りの紙入れは旦那の目に入らないわけですが、そこはそれでは余りに陳腐。さすがに談笑師、旦那が手紙入りの紙入れを目にする展開としてのサゲは・・・、なるほどねぇ。
仲入り
ジーンズ屋ようこたん(42分)
ロケで伺った岡山県倉敷市児島地区の現在の主産業がジーンズであるという前振りから、本編に入るとこれがなんと「紺屋高尾」!お得意の古典改作の実際を目の前にして、ずーっと話の世界に引きずり込まれておりました。単純に登場人物や社会状況を置き換えるということだけでは元ネタを越えられない、という(恐らく)彼の主張が十分に納得できる内容でした。何はともあれ、目の前の客を笑わせるということに徹した姿勢は、それはそれでわかりやすく納得できるもの。必死で古典に取り組む名人擬きの話を聞いた後の不完全燃焼感と比較して、実にさっぱりとしていて結構でした。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.