陸前高田ドキュメンタリー『あの街に桜が咲けば』、昨日(3月23日)関西大学での上映会で観てきました。偶然Twitterで見かけて早速申込、映画の上映と監督の講演そして各団体のポスターセッションという内容。都合でポスターセッションの前に失礼しましたが、とてもいい映画に出会えました。制作の小川光一監督、上映会を準備された長谷川先生、関係者の皆様にお礼申し上げます。
○どんな映画か
津波で大被害を受けた岩手県陸前高田市、その津波の到達点を桜でつなぐことで後世に伝えたい、そんな思いで地元の人々が結成したNPO法人桜ライン311。監督自身も参画するこのNPOの2年間の活動をインタビュー中心に構成した、「悲しみを悲しみで終わらせない未来に紡ぐドキュメント」。
○伝えたいこと
冒頭で、桜ライン311代表・岡本翔馬さんが、過去の津波の教訓を刻んだ石碑を紹介されています。先人たちが子孫に残したメッセージ、大事ではあるけれども十分には伝わってこなかった、せめて自分たちは後世により分かりやすく伝えたい、そのために「手間をかけ、年一回花で教えてくれる桜」を津波の到達点に植えようと。双方向性のメッセージを込めた桜の植樹、きっかけは陸前高田市長・戸羽太さんの著書のアイデアとのこと、しかしそれを実践するところがすごいですね。その原動力となったのが「悔しさ」、彼らはこう叫びます。
私たちは、悔しいんです。
平成23年3月11日、東日本大震災が発生し、1時間以内に東北各地を津波が襲いました。
陸前高田市でも多くの人が時間を止めました。その後、「実は、今回と同規模の津波が三陸沿岸を
飲みこんだ記録や痕跡がありました。」との、ニュースが流れていました。
10mを超える津波の可能性が、震災前から声高に叫ばれていれば!
震災前の防潮堤には、限界があることを知らされていれば!津波によって奪われた命は、
もっと少なくて済んだのではないか?その思いが、今も頭を巡ります。
私たちは、悔しいんです。
その思いを同じくする者が集まり、「桜ライン311」を立ち上げました。
次の時代が、この悔しさを繰り返すことのないように、
今回の津波の到達点を桜の木でつなぎ、後世に伝えたいとおもいます。
(桜ライン311公式サイトから)
○いい映画でした
被災者・被災地の悲しみの深さは、計り知れないものがあります。そして、計り知れないものは伝えにくいものでもあります。しかしここに登場する桜ライン311の人々は、「悲しみ」の後の「悔しさ」を具体的な行動に繋げ、観ている私たちが「悲しみ」に襲われないように提案します、「自分の街に、心の中に、桜ラインを」と。すごいと思いました、自分たちが被災者として支援を求めるなどと言うスタンスでは決してなく、あなたたちも被災者(予備軍)なのですよ、自分の大事な人を守れますかと、私たちを叱咤激励してくれます。40分という絶妙の編集がまたすごい、監督自身が述べておられましたが、学校の教材としてもぴったり。
○気になるとこと
私自身は熊野地域を主なフィールドとして、過疎地域の社会変容を観察しています。近年最も深刻なのが獣害、とくに鹿については本当に各地で困っておられます。この点について監督自身も言及されていましたが、桜植樹の展開に対して大変心配なのが鹿への対応。人的資金的資源の確保は当然ですが、獣害に対する各地の知恵の結集がより一層望まれます。
○関連サイト
・『あの街に桜が咲けば』公式サイト
・桜ライン311
・関西大学商学部長谷川研究室