昨年は四十七都道府県・四十七日連続独演会「三三五五七七」をやり遂げた柳家三三、今年は週末を利用してのお礼行脚、京都会場は昨年同様年度末最後の日曜日となりました。あいにくの雨ではありましたがよく入っていましたね、ざっと数えて250程度か、300まではいかないでしょう。桟敷席に座布団を並べてそこに番号札、ほどよく余裕のある配置でしたから、おそらく前二列のパイプ椅子を並べた席よりも楽に観ることが出来たと思います。あくまでも好みでしょうが、私はこの人の「あっさり感」が好きですねぇ。自分を出し過ぎずに、噺自体が持つおかしみを大事にされているところ、やはり小三治の弟子だなぁと感じ入ります。できれば、京都で年に二回くらい聴ければなぁ。
構成は昨年同様二席続けて喋って仲入、その後一席。そうそう、昨年の様子はこちらの記事をご覧下さい。
- 悋気の独楽(40分)
- 昨年の企画と今年のお礼参りまでのいきさつを語りながら、客の反応を時間をかけて探っている様子。やがてヤキモチの話になったので一瞬「アレ?」、というのも昨年も同じような展開で「権助提灯」に入ったから。22分のマクラの後悋気の独楽へ、この噺、上方版では冒頭に御寮人さんと女衆(おなごし)のお竹どんのやりとりが入り、後半に定吉が戻ってからもこのお竹どんがあれやこれやと問い詰める重要な役回りとなっています。江戸版ではこの女中は登場せず、上方版にある他の従業員とのからみもなく、非常にスッキリとした構成になっていますね。その分、定吉の比重が大きくなってきて、上方よりも少し年かさのしっかり者イメージ。上方の噺を江戸に移し替えた典型的なパターン、その作業(=3代目柳家小さん)の視点を通して東西の文化比較まで出来そうな佳品です。
- 死神(43分)
- 一席目を下げてから、そのまま短い言葉をはさんで二席目へ。死神を追い払う呪文やサゲなど、いろんな人がいろんな工夫をしているこの噺。三三さんはどなたから教わったのか存じませんが、最近観た師匠・小三治の若いときの映像と同じ演出、「風邪をひいている」という伏線があって、ロウソクの火の付け替えに成功するが、自分のクシャミで消してしまうというサゲ。
- 仲入
- 今日ぐらいの規模の関西の公演では、トイレの混み具合で多少時間をずらしたりすることもあるのですが、きっちりと15分の休憩時間で後半へ。ま、後の移動の心配があるのでしょうね。
- 花見の仇討ち(41分)
- やはりこの時期ですからこの噺か「長屋の花見」かどっちかな、などと想像しておりました。上方では「桜宮」とも称するこのネタ、個人的には桂南光さんがもっとも耳に馴染んでいます。南光さんの場合には、巡礼の割り台詞に時間をかけて笑いをとるという演出が好きです。このあたりも東西の違いが垣間見えて面白いですね、しつこく笑いを追求するか、さらっとストーリーを展開させるか。ともかく、先月の大雪の話題になり、「40数年ぶりの大雪」と言われてもまだ生まれていなかったと。そうですね、本当にまだ若い。私は東京の定席は未体験、できるならこの人を寄席で聴いてみたいと思ったことでした。