京の噺家・桂米二さん、先日米朝事務所のFacebookページでインタビューが掲載されていました。そこにもあったことですが、「独演会」と名付けているのは地元京都の会だけ。今日の客席は八割程度の入りか、毎度のことながら、一人できっちり三席つとめる姿勢はすばらしい。私は2004年に関西の職場に戻って以降落語会通いを復活させたのですが、やはり地元ということで米二さんの会がどうしても多くなります。独演会に限っていえば、噺家生活30周年の会が2006年10月、2007年は今日と同じ7月14日、2009年は11月、昨年は噺家生活35年という節目の年、そして今年は祇園祭で混雑する三連休での開催。米朝直系の噺を手堅く演じきるその存在は本当に貴重、本日のプログラムにあった長老連への畏敬の念、やがて自身がその立場となられるよう末永い活動を願うものです。
本日の番組は、次の通り。
- 大安売り(桂ひろば)
- 京都新聞7月13日(金)夕刊の記事に寄れば、この噺を橘ノ円都から受け継いだのが若き日の桂三枝だったとか。それはともかく、恰幅のいいひろば君にお似合いの相撲取りの話ですが、昼間のビールが効いてウトウト、サゲの拍手で目が覚めたというのが真相。ひろば君、ゴメンナサイ(15分)。
- 阿弥陀池(桂米二)
- 新聞を読んでいないから世の中の動きを知らないという、今の学生たちにも通じるネタではありますが、同時に「過ぎし日露の戦」などという時代背景を折り込んだ風俗ネタでもあります。例の「体をかわす」というところで西宮戎を持ち出すのはかつての春団治の演出と言われますが、いずれにしても明らかにネタ割れしているもので客を引きつけるという、力のいるはなしでもありますね。聴いているものがみなわかっているということを前提にした米二さんの演出、客を十分に引きつける好演でした(31分)。
- 栴檀の森(桂米二)
- 私など「ふたなり」というタイトルでなじみ深いネタですが、近頃はみなこのようにいうのですね。文珍師や南光師でも聴いていますが、聴き所は、当初若い者から頼りにされているオヤッサンが実はとてつもない恐がりであるという対照の表現。続いて、身重の娘とのやりとりで「10両」と聞いて態度を豹変する場面、いずれも極端に表現を変えるのではなく一人の人物としての一貫性を失わないところ。その点、米二さんは元来があまり人物に過剰な貫禄など付けない語り口なので大変人にあった噺。最後の役人もあまりその存在を大きく見せない上方ぶり(?)、結構な出来でした(38分)。
- 仲入り
- 浪曲「両国夫婦花火」春野恵子
- 実は浪曲を生で聴くのは初めての体験、東大卒の才媛・春野恵子さんは東京から大阪の師匠の元に通ったという方で、所属団体も大阪本拠の浪曲親友協会。曲師の三味線のリードでうなるは夏の定番隅田川の花火を扱った「両国夫婦花火」、味という点ではもの足りませんが、爽やかな語り口で客席を引きずり込んでゲストの役目は十分に(27分)。
- 寄合酒(桂米二)
- 私の世代にとっては、やはり若い頃の三代目春団治師が定番ですね。もちろん、松鶴師も米朝師も聴いていますが。この噺の便利なところは、時間の都合でどこでも切れるところ、融通が利く上に笑う要素もたっぷりありますから、持っていて損のないネタ。米二さんでは初めて聴きましたが、鯛の料理をしながら犬とやりとりするシーン、表情も仕草も誠に愛嬌があって結構でした(33分)。
例によって、大量のチラシと自分の関係する落語会情報がぎっしり詰まったパーソナル落語情報(もちろん使用済みチラシの裏面利用)の配付、終了後もいち早く出入り口に駆け寄ってのお見送り、本当にマメな方です。次は、8月の臨時停車の会かな、お目当てはもちろん米二さんでは無くて二葉ちゃん。何とか、「牛ほめ」を聴きたいものです。