第七回露の新治寄席

第七回露の新治寄席
第七回露の新治寄席

 大阪道頓堀くいだおれビルの地下にある道頓堀ZAZAにて、第七回露の新治寄席が開かれました。今回は文也・新治二人会、文也師のこの時期ならではのネタと新治師のメリハリのある口演、対照的な個性の共演は両師の持ち味を十分に味わえる好演。前座の露の瑞ちゃんは一服の清涼剤、蒸し暑い土曜日の夜を爽やかに過ごすことができました。

子ほめ(露の瑞
露の都門下の四番弟子でキャリアは1年4ヶ月、とはいえ、桂雀々に入門して鈴々としての前歴があるだけに舞台度胸は満点。このネタは落語の入門編として落語家ならたいていの人が演じますが、前座が笑いをとるのは難しいネタ。というか、笑いをとるという姿勢そのものが邪魔なのですが、この方は口跡・所作がはっきりしており、噺の持つおかしみに加えて演者の個性がすでに出ています。いやぁ、楽しみな存在ですね(14分)。
ごんべえ狸(露の新治
新治師の魅力のひとつは、日常の何気ない会話からそこに生じているおかしさを改めて取り出す視点。もちろんネタですから何度も聞くことになるのですが、言葉は同じでも視点=切り口が明確故何度も笑ってしまうのですね。やはり、噺家のセンスのある面はマクラに現れます。この噺は山里に暮らすごんべえさん、床屋さんでもあるのですが、そこへいたずらに来た狸をめぐる一騒動。民話的な雰囲気を残しつつも、若いときの艶っぽい想い出を入れ込んでの落語仕立て。床屋らしく狸の頭を剃る仕草は念入り、サゲも上々、いい噺を聞かせていただきました(32分)。
船弁慶(桂文也
五代目文枝の弟子、ご本によれば入門時は上方落語協会の50番目だったとか、随分と時の経過を感じます。年齢的には新治師の方が先輩ですが、香盤はこちらが上、個性の違う二人会、いい企画だと思います。この噺は、五代目文枝(というよりも、やはり私などは小文枝!)の十八番、雀のおまつ・雷のおまつという、上方落語に登場する女性のなかでも抜群の存在感を誇るキャラの立て弁がこの噺の前半の見せ場。さすがに小文枝直伝だけあって、息もつかせぬ(ように演じる)技術はさすが。師匠の色を求めるのは筋違いですが、息は確かに小文枝の味。比率的にどうしても米朝一門を聴く機会が多いので、何か懐かしいものに出会ったような気にさせていただきました(37分)。
仲入り
たが屋(桂文也)
江戸落語では夏の定番の噺ですが、上方の噺家さんでは初めて聴きました。この手の噺を聴く度に、江戸の地図をきちんと学修したいという思いに駆られます。通りの名、橋の名、登場人物の空間移動をもっとリアルに自分の頭の中で再現できたらどんなに楽しいだろうなと。もちろん、上方落語であっても理解の足りない部分は沢山あるのですが。ストーリーは江戸のものと(ほぼ)同じだと思いますが、個人的にはこれを上方で演じることに違和感が残ります。江戸の武士と町人・職人の関係があってこその噺で、大坂の町人・商人と武士の関係はまた違っているのではと、思い込みが過ぎるのかも知れませんが(22分)。
猿後家(露の新治)
女性の顔が猿にそっくり、決してオフィシャルな場では言えなくとも、プライベートではついつい我々もネタにしてしまいがちなこと。これをそのまま噺に仕立てても普遍化は無理、それを人間関係の綾を表現するいわば道具としての位置づけ、なるほど、落語というものはよくできていますね。当夜の新治さん、前半の伊勢参りの報告、なかでも奈良名所の立て弁が見事でした。ただ、何度か言いよどむ場面もあったことと、二席とも汗を拭く場面が多かったことで体調が悪いのかと訝ってしまいました。案の定、終演後の挨拶で点滴を受けての高座であったとのこと。来月は東京の出番が続きます、師匠、どうぞご自愛下さいますように(29分)。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.