京都みなみ会館で9日(土)から始まったドキュメンタリー映画「小三治」、早速観てきました。彼は落語家としてはじめて人間国宝となった5代目柳家小さんの弟子で、立川談志の弟弟子にあたる人。残念ながら私は生で聴いたことはありませんが、独特の間を持つ人で、聞き手に緊張を強いる談志の芸風とは正反対。若い頃は目線の鋭さがとんがった印象を与えていましたが、いまは哲学者然とした風貌がいい味わいとなっています。以前、枝雀さんが亡くなった時の逸話ですが、訃報を聞いた時に「苦しんでいるのはおめえだけじゃねぇんだ」と言ったとか。これも有名な逸話でご本人が喋っていますが、師匠である小さんが彼の噺を聞き終えた後ぽつり、「おめえの噺は面白くねぇなぁ」。この言葉が、彼のその後の落語との戦いのバネとなっているのでしょう。私自身は、面白いと言うよりも「おかしみ」を持った人と受け止めています。苦しみの後からにじみ出てくるおかしみを感じさせてくれる噺家さんであり、喋らなくてもじっと顔を見ているだけでいつしか微笑んでしまう、そんな印象を持っています。映画の中では彼の落語観・芸談が随所で披露されますが、結局はたった一つのこと、それは芸ではなく人間が大事と語っているわけです。落語に興味のない人にもぜひご覧頂きたい、いい作品です。
映画の最後で彼が珍しく演じたという
出演:柳家小三治 入船亭扇橋 柳家三三 立川志の輔 桂 米朝
語り:梅沢昌代
監督:康 宇政 プロデューサー:安西志麻 米山 靖
撮影:杉浦 誠 録音:米山 靖 スチール:青木信二
協力:伊勢真一 平田慶文 鈴本演芸場 社団法人落語協会 パドック
支援:文化庁
企画・製作:オフィス・シマ ヒポ コミュニケーションズ
2009年/ドキュメンタリー映画/104分