落語家の死

 勤労感謝の今日はまるまる一日休養日、読書と買い物、それに食事とお酒で一日が終わろうとしています。昨晩から引き続いて読んでいたのは故・桂吉朝のご子息が父親の七回忌にあたって出版された『吉朝庵: 桂吉朝夢ばなし』。読み終えてしばらくはうつらうつらと腰枕と共にうたた寝、起き出してみるとTwitterでは立川談志師の訃報で大騒ぎ。記事を読んだり新聞を見たりしていましたが、これほどの騒ぎになるのはさすがに談志師、生で聴いたことはありませんが、高校時代に読んだ『現代落語論』はとても刺激的であったことを想い出します。そんなこんなでいささか感傷的な今夜、自分の直接知っている(上方の)落語家の死について確認作業をしてみました。

 私自身が直接聴いて、それなりに理解し記憶している上方の噺家さん、鬼籍に入られた方を生年順に並べてみました。

三代目 林家 染丸(1906年3月25日 – 1968年6月15日)
上方落語協会の初代会長、とにかく恵比寿顔が印象的で、「お酒を飲むなら長龍」というCMが記憶に残っています。
六代目 笑福亭 松鶴(1918年8月17日 – 1986年9月5日)
いわゆる上方落語の四天王の筆頭、枝鶴から松鶴を襲名する前後のテレビ番組を観た記憶があります。高校の落研の先輩である笑福亭呂鶴さんの初舞台をみんなで角座まで応援に行ったことがありますが、角座の後ろの席で聴いておられた師匠に部員全員で挨拶しました。私にとっては、永遠のアイドルであります。
三代目 桂 米紫(1927年6月26日 – 1995年6月15日)
漫才出身で米朝師に弟子入り、角座で何度か聞いています。顔も声も、一時代前の芸人さんという印象、晩年は上方落語協会の事務方を担当されていました。
五代目 桂 文枝(1930年4月12日 – 2005年3月12日)
私の世代では、小文枝の方が通りがいいですね。何と言っても女性が上手い、「船弁慶」の雷のおまつさんは永遠に不滅です。
四代目 桂 文紅(1932年4月19日 – 2005年3月9日)
四天王と福団治・枝雀・仁鶴世代の間にあって、文我さん共々貴重なつなぎ手。決して爆笑をとるタイプではありませんが、文章をよくものされ、その日記が後年当代文我師によって『若き飢エーテルの悩み』として公刊されました。
三代目 桂 文我(1933年7月5日 – 1992年8月16日)
文紅師同様四天王の次の位置にいて、上方落語界ではユニークな存在であったと思います。よく酒癖の悪さが話題になった方ですが、飄々とした味わいがあって、あの軽さは好きでしたね。
初代 森乃 福郎(1935年9月3日 – 1998年12月27日)
噺家というよりも、漫談家もしくはワイドショーの司会者として関西では著名なタレント、そして何よりも競馬通として有名な方でした。ハンサムかつおしゃれ、スマートな京都出身の噺家としても貴重な存在でした。
二代目 桂 枝雀(1939年8月13日 – 1999年4月19日)
伊丹市立高等学校の定時制に通いながら、県立伊丹高等学校でアルバイトをされていたことがあり、私の高校在学中には当時の前田少年を記憶されている先生がおられました。爆笑落語になる前の、座布団にきっちりと座って(髪もふさふさとしていて)論理的な噺を展開されていた小米時代が懐かしい。
二代目 桂 春蝶(1941年10月5日 – 1993年1月4日)
枝雀さんとほぼ同時期に関西で活躍され、二人で同じ番組をもたれていました。高校時代に、両氏のテレビ番組に出演させていただいたことがありましたが、生で見るとテレビで観るよりさらに細い方。落語はというと、『お玉牛』のような艶っぽさがあるものは聴けましたが、力を抜きすぎた高座は当時は好きになれませんでした。
四代目 林家 小染(1947年6月11日 – 1984年1月31日)
すでに仁鶴・三枝による落語ブームが巻き起こってから、テレビ番組では『パンダ』というユニットで目立っていました。当時としては、四人の中で唯一まともな話の出来る方でした。ただ、その最後が示すように、落語家としては全面的に共感できる方ではありませんでした。
桂 吉朝(1954年11月18日 – 2005年11月8日)
何と言っても米朝落語を継承する存在として認められいた方、ただ、生き急いだという印象は否めません。もちろん、好きこのんで病気になる方などいないのでしょうが、彼の年譜を見ていると、後年の癌の発症にあわせるように、多様なものを吸収し表現することがあまりにも早すぎたと思えてなりません。それでも、最後の『弱法師』とその一つ前の『かぜうどん』、両方を観・聴けたことは幸せであったと思います。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.