第四回露の新治寄席、素晴らしい!

[flickr id=”10236028313″ thumbnail=”thumbnail” overlay=”true” size=”large” group=”” align=”left”]  世間は三連休、私はともかく普段土曜日も勤務が当然のツレアイには初めてのこと。その初日の12日(土)、久しぶりに天満天神繁昌亭へ行ってきました。近頃お江戸で大評判の露の新治師匠、露の五郎兵衛師と林家正蔵(先代、彦六)師の流れを受け継ぐ希有の存在、やっと生で聴くことができました。容姿端麗・眉目秀麗、所作は鮮やか口跡爽やか、いやはや、予想を上回る素晴らしい高座でした。断続的ではあれ落語を聴き続けて50年、落語の高座で感動を覚えるというのは、70年代前半に角座で米朝師の地獄八景を堪能した時くらしいか思いつきません。近頃は原則京都開催の会のみに自制しているのですが、この会は関西ならどこでも行きたくなりました。

狸の賽(露の眞
露の都師の二番目のお弟子さん、三重県志摩市の出身、京産大卒業後に弟子入りして6年目。志摩の出身かつ最近Twitterをフォローして個人的には身近な存在、開口一番の後は高座返し担当。噺はとても素直で、好感が持てます。このまま真っ直ぐまず10年、突き進んでほしいと思います。これは仕方のないことなのでしょうが、昨晩の私は二階席、できれば最初に会場全体に目配りした挨拶が望まれます、16分。
蛸坊主(露の新治
登場と同時に場内割れんばかりの拍手、全国各地からの追っかけや、同級生の団体など、本当に温かい、いや熱い歓迎ぶり。新治師もそれに応えて会場全体、もちろん二階席にもくまなく目線を送って丁寧なご挨拶。ネタは「蛸坊主」、私は初めて聴きました。あまりネタの中身を書くのは好まないのですが、少し紹介。コトバンクにはシンプルに「古典落語の演目のひとつ。上方種。八代目林家正蔵が演じた。」と。大阪新聞連載中の相羽秋夫のお笑い食べまくりには「東京落語」と紹介されています。落語あらすじ事典千字寄席には、より丁寧な説明が。少し引用させていただくと、

原話は不詳で、本来は純粋な上方落語です。

明治以来、大阪方が「庇を貸して母屋を乗っ取られた」
演目は数多いのですが、この噺ばかりは、東京は
ほんのおすそ分けという感じです。

大御所の桂米朝、故・露の五郎兵衛、桂文我ほか、
レパートリーとしているのは、軒並み西の噺家。

東京では、八代目林家正蔵(彦六)が、かつてこの噺を
得意にしていた大阪の二代目桂三木助(1884-1943)に
習い、舞台を江戸に移して演じたのみです。

 マクラで、京・大坂・江戸の三都それぞれの落語事情を簡単かつ明瞭に解説し、ネタに入ると料理屋の大将、ゆすりの坊主、とりなす老僧、それぞれの人物の描き分け、終盤の芝居がかりの所作、いやいや本当にお見事! 落語概論実技付き、流れるような21分でした。

太神楽曲芸(豊来屋板里
この方、元は揚野バンリという名でジャグリングをされていたのですが、寄席出演がきっかけとなって太神楽を始められたとのこと。やはり、寄席の色物とは重要な存在ですね、噺を聞く緊張感・集中力をほぐしてくれます。口調がまだ寄席的ではない所がほほえましい、19分。
中村仲蔵(露の新治)
歌舞伎に関連するネタは沢山ありますが、逆に芝居を知らない客であれば、その落語の醍醐味が通じにくい。新治さん、客に失礼のないような気配りをしながらも芝居の解説とこのネタの位置づけ、本当によく考えられた演出です。圓生・正蔵・雲助といった江戸落語の名手が取り組まれますが、上方でやられる方はいるのかな? 主人公を上方出身として設定していますが、周りの登場人物は妻を除けば江戸言葉、噺の進行に何の不自然さも感じさせません。役作りに悩む仲蔵が雨に降られてそば屋に入り、そこへ登場した浪人のなりをヒントとする件、このあたりは本当に芝居を見ているような錯覚に陥ります。この高座に出会えて良かった、感動の37分。
中入り
源平盛衰記(露の新治)
中入り後は、見台膝隠しを用いての講釈ネタ。おそらく、ご本人も緊張が解けたのでしょう、リラックスの表情で上方らしい演出。疲れもあったのか何度かかむ場面もありましたが、何ら問題ありません。それぞれ異なる三席を配してのこの会、いずれはゲストを招くことも実現したいとのこと。事情が許せば(お金の余裕があれば)、本当に追っかけしたいです、30分。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.