江湖の好漢

 学生が少なくかつ冷房の効いたこの時期の通勤車内、意外と読書にふさわしかったりします。今日の往路で読み終えたのが北方謙三「水滸伝 十一 天地の章」。文庫本全19巻中の第11巻、しかも毎月1巻ずつの配本ということで年内読了は無理なのですね。それはともかく、ついついストーリーが気になって巻末の「解説」を読み飛ばすことが多いのですが、往路の早い時間に読了したので(他に読むものもなく)千里線の車内でゆっくり読めました。今回の解説は非常にわかりやすく、まさに「快説」でありました。執筆者は岡崎由美さん、早稲田大学の中国文学の先生なのですね。文体簡潔、論旨明快、往々にして原作者との因縁話や原文要約的なものが散見される中、専門家の見地からの当該作品の位置づけをコンパクトにまとめられたもの。まだ全体の半分しか読み終えてはいないのですが、胸のつかえがすっと取れたかのようで、大変結構でした。 😛

 解説者によれば、水滸伝原作は「江湖の好漢」の世界であるとのこと。江湖とは「天下、世間、世の中」という意味であり、好漢とは「男伊達、男の中の男」である。水滸伝の男たちは「江湖の好漢に数えられることを誇りとし、江湖の好漢との交際を好み、江湖の好漢の笑いものになることを恥とする」とのこと。北方水滸伝の特徴は、この「中国的情念の世界」を「革命に向かって組織的に邁進する行動原理で再構成した」ところに、その独自性があるとされています。
 なるほど、すっきりとはしました。んが、このように整理されると、今度は水滸伝原作そのものを読んでみたい気になりますね。というのも、私自身は多分に「江湖の好漢」にあこがれる性向をうちに含んでいると思っているからです。もっとも、夏休みに取り組むべき「宿題」に一切手をつけていない現状では、そのような時間的余裕があるはずもないのですが。
 さて、このような記事を書いている間は何ともないのですが、本来の仕事に戻ろうとすると、とたんに改築工事の音が気になってきます。今日も早めに退散することにしましょう。 😉

 

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.