アバンティホールでの年に一回の独演会、昨年は7月14日(土)の台風接近中に行われましたが、今年は少し早めの6月24日(火)。嵐を呼ぶ男も近頃は大人しくなったと見えて、雨も降らずに大入り満員。今回の目玉は中入り後の狂言、それと「代書」のオリジナルバージョンの通し、早い予約のせいでいい席が取れたこともプラスして、前売り3000円は十分に満足できるものでした。
今回の番組は次の通り。
- 狸の賽(桂ちょうば)
- ざこばさんのお弟子さんですが、私はわりと買っています。不器用そうに見えますが、声がよく出るのです。よく知られたネタですが、おそらく師匠に教わったとおりの素直な演出。マクラの「鷺の恩返し」もよく受けて結構でした(16分)。
- 田楽喰い(桂米二)
- 若い者が大勢集まって、兄貴の家でタダ酒を呑む段取り、肴の田楽を頂くための「ん廻し」と、賑やかなネタです。ポイントは例の「先年神泉苑の門前で・・・」という「ん」の付くだけ田楽をもらえるという件の工夫、誰しもその時に自分のオリジナルを入れたくなるもの。今回は「北京五輪バドミントントランポリン・・・」というオリジナルをはさんでのサービス、軽めにまとめて22分。
- 風の神送り(桂米二)
- 米朝師の復活ネタですが、すっかりポピュラーになりました。風俗描写が随所にあって、社会学・民俗学の教材ともなれる話です。冬のネタですが、やはり毎年三席の独演会ではしかたないでしょうね(33分)。
- 中入
- ロビーでは米二さんのCD・DVDの販売をしていたようですが、見ると欲しくなるので我慢我慢。
- 狂言・無布施経(茂山千之丞・丸石やすし)
- あまり狂言を観る機会がないのですが、好きですね。シンプルな所作はもちろん、何と言ってもあの声の出し方が好きです。今回の演目をこちらのページから引用します。
- 無布施経 〜ふせないきょう〜
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毎月のきまりで檀家へお参りに来た僧が、読経を済ませて帰りかけたところ、どうしたことか貰えるはずのお布施を出してくれません。
これが今後の例になっては困ると思い、再三後戻りしては雑談や説法にことよせて執拗に謎をかけますが、施主の返事は上の空です。
ついには袈裟を懐に隠し、置き忘れた振りをして探しに戻ったり、あの袈裟はねずみが穴を食い開けたので〈ふせ縫い〉がしてあるなどと言ったので、やっと施主もお布施に気がついて出してくれました。
僧は対面上、すぐ受け取ることもできず、辞退してみせる虚栄心・・・・・人間の弱点をユーモラスに、そして一抹の哀愁を漂わせて描いた名作です。
- それにしても千之丞さんはお見事、1923年生まれですから今年85歳、米二さんが「米朝師匠よりも年上ですが、この方はこけても骨折なんかしはりません」とやっていました。満足の30分でした。
- 代書(桂米二)
- 近頃は「代書屋」と言わずに「代書」と表しますね。このネタは四代目米団治の作として知られていますが、私にとっては三代目春団治が定番メニュー、そして枝雀の「代書」はまったく別の噺と受け止めています。今回の米二さん、米朝師から教わったオリジナルをそのまま演じられました。登場人物や時代設定、余計なくすぐりも入れずに(おそらく)米団治師の演じられたものに近いはず。私自身、活字では読んでいても例の「トッコンショウメイ」の件は聞いたことがありませんでした。サゲまでしっかりと演じきったのですが、通して聴けた体験に感謝です(36分)。
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