史上最狂の笑福亭

 去る10月22日(金)に文楽劇場で開催された「六代目笑福亭枝鶴襲名披露公演」では、久しぶりに笑福亭一門の賑やかな様子を拝見することが出来ました。その際配付されたチラシの中にあったのが「史上最狂の笑福亭」という落語会の案内、迷わずチケットをゲットしたのは言うまでもありません。やはり、私にとっては落語=松鶴なのであります。昨晩の天満天神繁昌亭、あいにくの強い雨でしたが立ち見も出る盛況ぶり。先日の「米二・塩鯛二人会」では1階2列目で窮屈な思いをしましたが、今回は2階の最前列、椅子の大きさは変わりませんが前を気にしなくていい分楽でした。さて今回のメンバー、どこからどうみてもまさに笑福亭、枝鶴さん以外は若いときから存じ上げている方ばかり。ありがたくも懐かしく、楽しい一夜となりました。

 今夜の番組は次の通り。

挨拶(笑福亭枝鶴
襲名披露では口上を聞いているだけで自分が喋ることはありません、ということで最初に5分だけ時間をいただきましたとの挨拶。今夜登場する兄弟子たちへの一言コメントで場を和ませていました、まさに5分。
ちんげ(笑福亭鶴瓶)
このネタをどう表記するかとググってみたのですが、やはり仮名がよかろうかと。高校時代の友人が娘のために有名になった鶴瓶のサインをもらおうとする咄。マクラでは、兄弟子たちのエピソードで「史上最狂」の実態を紹介。ネタよりも、こちらの方がはるかに面白いといっては気の毒か、23分。
蔵丁稚(笑福亭松枝
忠臣蔵にちなんだ「禁断の下ネタ」をいくつかふっていましたが、場内の反応は何とも微妙、隣のツレアイの笑い声が響いていたのはちと恥ずかしい。本編になると、さすがに年季が入っているだけにぐんぐんと引き込まれます。仮名手本忠臣蔵、職場のDVDを借りて正月休みに自宅で観ようかな。数年ぶりの生の高座は十分愉しませていただきました、25分。
宿屋婆(笑福亭福笑
上から読んでも下から読んでも笑福亭福笑、昔も今も笑福亭福笑、独特の福笑ワールドはさらに毒気を増していよいよ健在。咄は田舎の温泉を訪ねる二人連れが、一人で宿を切り盛りする婆さんにいいようにあしらわれ、その実婆さんの正体はその村の村長というもの。時代をよく読み込んだなかなかの力作、そして、何よりも感服したのは彼のプロ意識。枝鶴・鶴瓶・松枝と順番に登場しながらも、誰一人として目線を二階に上げていない、これは客に対してかなり失礼な態度であります。しかし我が福笑師、マクラの段階で場内をくまなく見渡して、どの席の方にもちゃんと来場御礼の態度を表現されておりました、本日の秀逸、23分。
中入り
花筏(笑福亭松喬
私の高校時代には、鶴三さんとしてまだまだ駆け出し、我が落研創設者の呂鶴さんと一緒によく学校の落語会に来ていただきました。松喬となっていまや上方落語界の大御所、無骨・不器用がこれほどいい方向に花開いた方も珍しいのでは。落語家の世界と相撲の世界を対比して何処が違うかというと金の扱い、そこからすっとネタに入って安定感抜群の高座姿、26分。
質屋蔵(笑福亭枝鶴)
襲名披露公演の際には緊張感が羽織を着ているように見受けられましたが、ずいぶんとなれた様子。それでも、「繻子の帯」の件のところで帯を質に入れることになった顛末を飛ばしてしまうミス、兄弟子たちの最後にトリをとることの緊張感か。ただ、前日に聞いた米二さんと比べて、米朝系と松鶴系の演出の違いが楽しめたことは私にとっては収穫、39分。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.