連休初日は昭和の日(もちろん私など「天皇誕生日」の方がしっくりきますが)、ゆっくりと読書を楽しみました。まずは立川流真打ち・立川談慶師の『大事なことはすべて立川談志に教わった』、類書にありがちなインタビューをまとめた読みやすい(=中身の薄い)ものかと思いきや、どうしてどうして中身がしっかりとした、読み応えのある良書でした。関西の落語好きに結構多い「落語は好きやけど東京の落語家は・・・」という方、立川流噺家のメンタリティーがよくうかがえて身近に感じることが出来ますよ。おまけに前座名が「立川ワコール」とくれば、私のような京都在のものには一挙に身内感覚、機会があれば是非生で聴いてみたいものです。
amazon掲載の内容を紹介すると・・・
長野県上田市で生まれ、慶應大学卒の初の真打、立川談慶!
一流メーカーワコールでの安定したサラリーマン生活を投げ打ち、立川談志に入門。
師匠からからの無茶ぶりに、文字通りに振り回された前座時代から
二つ目、真打へと昇進、そして談志師匠との別れ。
抱腹絶倒のエピソード数々に、時にホロリとするいい話満載の初エッセイ!
第一章 殺しませんからの談志のひと言
(前座修行に比べれば、サラリーマンは甘い)
第二章 俺を喜ばせろ
(師匠の「無茶ぶり」どうする、どうする?)
第三章 潜伏期間があるのは病気だけじゃない
(二つ目への処世術は、サラリーマンの出世
第四章 努力ははバカに与えた夢
(真打への挑戦、想定外を想定内にする知恵
第五章 売れれば売れるほど孤独になる
(落語家流処世術とサラリーマン人生を楽しむ方法
「あとがき」によれば、「ツイッターやフェイスブックで、師匠の思い出話などを中心に書き続けていた」ものが知人の編集者の目にとまり、出版となったもの。「無茶ぶり」をキーワードに、9年半の前座修行を経ての二つ目昇進、そして5年後の真打ち昇進までの師匠・立川談志とのあれやこれやを「苦労話」として仕立てるのではなく、「堅気のサラリーマン」に向けて自分の体験を経験に昇華して伝えるメッセージ。
何よりも、ご本人の言葉遣い・文章がしっかりしています。編集者の力量もさることながら、ここらあたり自身の3年間のサラリーマン体験が効いていますね。人生を途中で脱線した落ちこぼれなどという捉え方ではなく、自分に忠実な人生を選択したからこそ、長い前座修行も師匠の「無茶ぶり」も「立川談慶」という噺家を形成するためには不可欠のプロセスであったという境地・境遇にたどり着けたのでしょう。多分、書棚に戻しても今後何度か手に取るような、大事にしたい一冊です。