第53回桂米二臨時停車の会(2011年12月16日)

 京の噺家桂米二さん、小さな会を沢山開いていらっしゃいますが、会場としては京都府立文化芸術会館がホームグラウンドのようなもの。とくに和室は定員60名とちょうどよく、マイクを使わずに落語を聴くにもってこい。ただ、近頃は座布団の上で2時間というのはさすがにしんどくなってきました。数えて53回目、今日のお目当てはもちろん二葉さんの「東の旅発端」、前回のこの会場では動物園で三度絶句したとは本人のTwitterでの告白、果たして今回はどうなるのか。そんな心配を胸に秘めた、いわば我が子の発表会を見るかのような心持ちの方は、私以外にも大勢おられたはず。結果は・・・、十分満足できるものでした。

 今回の番組は、次の通り。

東の旅発端(桂二葉)
すでに天満天神繁昌亭の落語家名鑑に、二葉さんの紹介が出ていますね、写真はありませんが。さて、上方落語の基本である旅ネタ、その中でも(米朝一門では)最初に教わるのが「発端」、お伊勢参りのスタートです。右手の張り扇と左の小拍子で、パンパン・ガチャガチャと見台を叩きながら、テンポ良くおしゃべりするのです。声を出すことや間を取ることの訓練として欠かせないものですが、今夜の二葉さん、上々の出来でしたよ。前半は台詞ではなく地のしゃべりが続くわけですから、時々目線のやり場に困ってはいましたが、何よりも止まらずに最後までやりきったのは上々の出来。今朝のTwitterでは抜けたところがあったと悔しがっていましたが、その気持ち自体が成長の証し。これからも応援し続けます(15分)。
初天神(桂鯛蔵)
塩鯛さんの二番目のお弟子さん、昨年八月に一門揃って襲名・改名されましたが、この名前もすっかり馴染みました。キャリアは9年目ですが、さすがに二葉さんの後に出るとその蓄積の差は歴然。暮れの会ということでネタは初天神、子どもとその両親、隣の親父、飴屋にみたらし屋、それぞれにテンポ良くかつ左右上下の目線の配置も的確。駆け出しの頃から聞いていますが、順調に成長されています(19分)。
餅屋問答(桂米二)
いきなり、言い訳から始まりました。あるお寺さんからこの噺をリクエストされて今日がネタおろし、だが未だ固まってないと。確かに、途中二度ほど詰まる箇所がありました。この噺は江戸では「蒟蒻問答」として演じられますが、ストーリー展開は同じ。やくざな男が無住の寺に入ったはいいが、旅の雲水に問答を求められて夜逃げの算段、代わりに対応する親父さんが、餅屋か蒟蒻屋かの違い。仏教・禅宗の坊主が出てきますから、それらしい言葉遣いが必要。確かに何度か失笑・苦笑してしまう箇所がありましたが、これはこれで結構かと。だって、自分の会で新しいチャレンジするのは噺家としては当然、聴く側は噺が完成するプロセスを味わえるわけですからこれも楽しみの一つ。来年二月の完成を楽しみに待つことにします(37分)。
仲入り
けんげしゃ茶屋(桂米二)
「けんげしゃ」とはいたってゲンを気にする人のこと、という説明をかつて米朝全集の解説で学びました。米二さん、自分の会ではプログラムにこの種の難解な言葉の解説を書かれています。しかも、チラシの裏にびっしりと印刷、マメだから出来ることとは言え、毎回きちんと記録に残される姿勢には頭が下がります。さて、仲入りを挟んでのトリネタは手慣れたもの、安心して聴けました。これも正月の噺ですから、今が旬。元日を祝うお茶屋でゲンの悪いことばかりいい、挙げ句の果てには葬礼の行列までやってくる。目出度いときに、縁起の悪いことばかり続けることで、結果的に目出度い気分を浮かび上がらせる落語的表現。珍しく、二席とも見台なしの高座でした(37分)。

投稿者: myon

このブログの管理人は,京都の下町に住み,大阪の女子大に勤務するお気楽オジサンです.通勤車内の読書記録・上方落語鑑賞メモ・料理食べたり作ったり・同居猫ココの日常などを主なコンテンツとしています.