今年1月18日(土)の第5回露の新治寄席、当日終演後に予約したおかげで今回の整理券番号は37番、昨晩は繁昌亭最前列に席を取ることができました。少し演者を見上げる必要はありますが、何しろ前に余裕があるので足が楽、終演までストレスなく楽しむことができました。次は5月31日の小染さんとの二人会、場所は変わって道楽亭、当分追っかけを続けるつもりです。
- つる(露の雅)
- 都師の筆頭弟子、26歳の入門で7年目。新治さんの会では眞・紫と都一門の女性を聴かせていただいています。噺の出来など何も言うことはありません、ひたすらネタを繰って頂くしかないですね(14分)。
- 七段目(露の新治)
- 袴を着けての登場で所作が入る噺と予想、案の定七段目でした。私など歌舞伎の素養がないので役者の物まねなどよくわからないのが残念ではありますが、それでも噺家それぞれの所作の比較を通じて落語の中の芝居は十分に楽しませていただけます。上方では米團治さんが得意にされていますが、新治さん、やはり綺麗ですね。加えて旦那と番頭、若旦那、定吉という登場人物、それぞれの表現は当然ですが、ちょっとしたやり取りに他の演者とは違う微細な表現が楽しい。ひょっとするとこれが「五郎兵衛の味」なのかもしれません。「露の五郎」時代の若い頃はよく聴いていたのですが、五郎兵衛襲名後はあまり聴く機会がありませんでした。新治さんを聴きこむにつれ、もう一度五郎師に会いたくなりました(27分)。
- 幾代餅(柳家さん喬)
- さん喬師を生で聴いたのは二回だけ、いずれも松喬さんとの会で2011年7月31日・2012年7月29日の二回。佃祭と船徳、いずれも夏の噺を堪能しました。ただ、ホールの少し離れた席でしたので、今回は間近に観ることが出来て嬉しい。何しろこの方は上下の切り方が繊細かつ素直で本当に観やすい、上方若手に多い枝雀の誤解釈に気づかぬ輩はぜひこの方の高座を勉強して欲しいものです。親方が清蔵の部屋に入る、すっと上座に直って話を始める、この流れのさりげなさが聴く側に安心感を与えてくれるのです。演者に対する安心感をもてる、確認できた段階で私には十分満足です(38分)。
- 中入
- 手洗いに立ったツレアイから「次回の予約受け付けているよ」とのこと、時間が無かったので終演後に7月19日のチケットをお願いしました。
- 笠碁(柳家さん喬)
- 楽屋話が弾んで気がつけば出囃子がなったとのこと、マクラを振っているうちに五代目小さんがギャンブル嫌いだったとのこと、その後囲碁・将棋と続いたのでこちらも予想通りの笠碁。小さんは映像でしか知りませんが、子どもの頃から大好きでした。傘がないので笠を被って様子見に、首を振って中の様子をうかがう仕草、顎で入れとの合図を向こうへ行けとの取り違え。このあたり、最前列なので本当に間近で堪能できました。江戸のトップクラスの噺家をホールではなく寄席の雰囲気で楽しめる、繁昌亭の誕生は落語界全体にとって本当に大きな意義があるのです(30分)。
- 宿屋仇(露の新治)
- 二席目は見台が登場しての旅ネタ、宿屋仇はもちろん初見。兵庫の三人連れ、武士、伊八と、それぞれの個性分け、宴席での盛り上がり、武士言葉と女性言葉のそれらしい雰囲気作り・・・、誠に表現要素の多いしんどいネタではあります。今夜の新治さん、七段目同様にはめものたっぷりで上方らしい賑やかな高座。後半、少し喉の調子が心配な場面もありましたが、さん喬師を意識しての上方ぶり、二人会の良さはこのような刺激的な高座を生み出すところにありますね(42分)。
終演後に、露の五郎兵衛師のCDを買い求めました。『生涯未完成』とのタイトルで、「皿屋敷」(1975年、五郎)「蘇生の息子」(2006年、五郎兵衛)が収録されていました。帰宅後に、ワイン飲みながら聴いてみたのですが、その声の違いに愕然、年月の流れに改めて気づかされたことでした。